てしまった。彼の両手には鉄の手錠がピチリという音と共に嵌《はま》ってしまった。しかし署長以外の者は、意外という外に何のことやら判りかねた。
「おうおう、派手なことをやったな。但し君はまさか気が変になったんじゃなかろうネ」とK新報社長がやっと一と声あげた。
 丘署長はそれに構わず、技師を引立てた。
「署長さん――」と青谷は怨《うら》めしそうに叫んだ。「これは何が何でもひどいじゃないですか。どうして手錠を嵌《は》められるのです。その理由を云って下さい」
「理由?――それは調室へ行ってから、こっちで言わせてやるよ」


     7


 青谷技師は調室の真中に引きだされ、署長以下の険《けわ》しい視線と罵言《ばげん》とに責められていた。彼は極力犯行を否定した。
「……判らなきゃ、こっちで言ってやる」と署長は卓を叩いた。「これは簡単な問題じゃないか。あの特別研究室に入るのは、博士と君だけだ。床をドンデン返しにして置いて、その下へ西洋浴槽のようなものを据《す》えてサ、それから一方では液体空気のタンクを取付け、栓のひねり具合で浴槽の中へそいつが流れこむという冷凍人間製造器械は、君が作ったものに違い
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