。
「オイしっかりしろ署長」と田熊社長が叫んだ。「なんか変な音がするじゃないか」
「変な音?」
なるほどどこやらから、ピシピシプツプツと、異様な音響が聴えてくるのであった。
「うん、見付けたぞ」
青谷技師が室の一隅へ飛びこんで行った。そこには青いカーテンが掛けてあった。技師はカーテンをサッと引いた。すると衣装室と見えたカーテンの蔭には、洋服は一着もなかった代りに、白いタンクが現れた。そこにある一つのハンドルに飛びついて、それをグングン右へ廻した。
「それは何だ」と署長が叫んだ。
「これは液体空気のタンクです」と技師は云って、一同の方へ険《けわ》しい眼を向けた。「あなたがた注意をして下さい。その大きな机の後方へ出てくると、生命がありませんよ」
「ナニ、生命がないとは……」
恐いもの見たさに、一同は首を伸べて、大机の後方を覗《のぞ》きこんだ。
「いま明けてみますから……」
青谷技師は側《かたわ》らの鉄棒をとって、床の一部を圧した。すると板がクルリと開いて、床の下が見えてきた。床下には普通の洋風浴槽の二倍くらい大きい水槽が現れた。その中を見た一同は、思わず呀《あ》ッといって顔を背《そ
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