ようじゃったが、一体そんなことは出来るのかしら?」
 人間の死体をバラバラにした事件や、またコマ切れにした事件というのは聞いたことがあるがこの話のように、吹けば飛ぶ位のメリケン粉か灰のようにするという事件は未《ま》だ耳にしたことがなかった。どうすればそんなことが出来るのだろうか。――こいつは興味あることだったが、更に難問だった。考えてゆくうちに、
「――うん、これだナ」
 と田熊社長は手を打った。あの男が、九分までは解けたが、一分だけ解けぬ問題があるといったのは、このことだと気がついた。あの男にも、どうして人間灰が出来るか、それが判っていないのだ。そう判《わか》ると、なんだかアベコベに痛快になった。
「それから、もう一つ電話を切られたところで、――二つの誤算のうち、一つは西風が途端に南西風に変ったという話だったが、もう一つの誤算は……というところで話が切れた。あれは一体どんなことを云うつもりだったろう?」
 ――こいつも考えたが判らない。しかしこの方は、何だかモヤモヤと明るいとでも云ったように、なんだか大変判りそうであった。なんだか既に気がついていることがらの癖に、そいつが一寸胴忘れを
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