わる右足湖の東の地を云う。湖口は東丘村が湖に臨《のぞ》むところを云う)から、右足湖を越えて、庄内村(右足湖の西の地を云う、空気工場はそれの湖水に臨む湖尻《うみじり》にある)へ入ろうとしたが途中、東丘村で日が暮れ、湖水にはまだ遠かったこと。
(二)午後七時半ごろ、かなり湖水近くまで来たと思ったときに、一つの墓地に迷いこんだ。そこには、真新しい寒冷紗《かんれいしゃ》づくりの竜幡《りゅうはん》が二|流《りゅう》ハタハタと揺《うご》めいている新仏《にいほとけ》の墓が懐中電灯の灯りに照し出された。墓標《ぼひょう》には女の名前が書いてあったが覚えていない。しかし墓は土をかけたばかりで、土饅頭《どまんじゅう》の形はまだ出来ていなかったこと。
(三)墓の側にはトラックの跡がついていたので、それについて行けば本道に出るだろうと思って辿《たど》ってゆくと、やがて一軒の家の前に出た。標札には「湖口《ここう》百番地、青谷二郎」と認《したた》めてあった。その家の前に湖水の水が騒いでいたこと。
(四)湖水を渡るつもりで舟を探したところ小さいのが一|艘《そう》あったので、これに乗って西へ西へと漕《こ》ぎ出した。西風
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