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給仕 (息をはずませながら)あ、大山先生。お宅から電話です。すぐお帰り下さい、ですって。
先生 (おどろき)ええっ、な、な、なにごとか起ったというのか。
給仕 先生のお宅で赤ちゃんが生れそうですって。
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生徒一同、うわーっと喚声《かんせい》をあげ机を叩き床を踏みならす。
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先生 えっ。とうとう始まったか。それはまことに由々しき一大事。
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生徒一同うわーっ。
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先生 これこれ(と生徒を制しながら)皆よろこんでくれ、先生のところでは十五年ぶりに、ついに赤ん坊が生れるのだ。神様が赤ん坊をさずけたもうたのだ。戦争で、尊《とうと》い兵士は死ぬ、国力は減る、それを補《おぎな》うのは赤ん坊の誕生だ、笑い事ではない。先生の家には留守番がないのだ。ちょっといってくる、静粛《せいしゅく》にしているんだぞ。
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先生の靴音去る、扉の音。
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