した上で、手でもってその缶を握って振動を止めるのである。そのとき耳を澄ませて聴くならばいま叩いた缶は手でおさえて振動をとどめたにも拘《かかわ》らず、それと同じような音色《ねいろ》[#「音色」は底本では「音音」]の音が、かなり強くきこえるではないか。はて、その音は、何処で鳴っているのだろうか。
よく気をつけてみるなれば、あとから糸をつけて釣《つ》るした叩きもしないドロップの缶が、自然にグワーンと鳴っているのである。これを共鳴現象《きょうめいげんしょう》というが、二つある振動体が同じ振動数をもっているときには、一方を叩くと振動が空中をつたわって他のものを刺戟することとなる。その刺戟がもともと同じ性質の刺戟だもんで、棒で叩かれたと同じ効果《ききめ》をうけ、そいつも鳴り出すのだ。ちょっと考えると、それは一方が鳴ると、それについて自然に応《こた》えるかのように鳴り始めるようにみえるのだ。若《も》し、別にそっと釣して置いた振動体が寸法のちがうものであっては効果《ききめ》がない。例えば大きい缶詰の空《あ》いたものなんかでは駄目である。つまり振動数が同じでないものでは駄目である。
あとは釣るした缶
前へ
次へ
全42ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング