》にたけた彼にとっても、容易なことで解決できる謎ではなかった。
 だが幸運なる彼は、とうとう非常にうまい方法を知ることができた。
 それは、物体の振動を利用する方法だった。いまドロップスの入っていた空《あ》き缶《かん》の蓋を払いのけて底に小さな孔《あな》をあけ、そこに糸をさし入れて缶を逆さに釣り、鉛筆の軸《じく》かなにかでコーンと一つ叩いてみるがいい。そうするとこの缶は形の割合には大きい音をたてて、グワーンと、やや暫《しばら》くは鳴り響いているだろう。強く叩けば更に大きい音響を発する。しかしその音色《おんしょく》は、いつも同じものである。それというのが、こうした箱や壺《つぼ》めいたものには、その寸法からきまるところの振動数というのがタッタ一つきりあるので、一体振動数というのは音色そのものに外ならないものだから、それで同じ器《うつわ》を叩けば、音の大小はあっても、音色はいつも同じなのである。
 そこで、もう一つのドロップの空《あ》き缶《かん》をとりあげて、前と同じように、糸でとめて、ぶら下げて置く、その上で、最初の缶を思いきり強く叩くのである。するとたちまち大きい音がするであろうが、音が
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