にくたくたとなる。
 が、とど心靈は諦めの境地に達し、生前の好意を感謝したり、現在居る世界の樣子をぼつぼつと語り出す。
 普通第一囘の招靈では、その心靈は、ほとんど闇の空間に置かれてゐると告げる。それが第二囘目になると、夕暮ぐらゐの明るさになり、第三囘第四囘と、囘を重ねるごとに、その心靈の環境はだんだんと明るさを増して行く。
 何十囘に及んだ後は、曇り日ぐらゐの明るさになつたと告げる。そしてあたりの風物について語つてくれる。
 あたりは廣々とした野原であること。花は咲いてゐないが、自分が花が見たいと思ふと、その直後にこの野原に美しく花が咲き出でると告げる。机が欲しいと思ふと、野原に忽然と机が出て來る。なんでも欲しいものは、自由に出て來るのださうである。
 だが、その心靈は孤獨を告げる。野原に、自分ひとりで生活してゐるのださうである。ただ、いつだか老人の神主さんのやうな人が遠くを歩いてゐるのを見かけたといふ。心靈研究會の主事は、『その神主姿の人こそ、守護靈さんですよ』と、あとで解説してくれる。
 それから日が立つと、死因をなした病氣の痛みはとれる。それがとれると、こんどは集團生活にはいる
前へ 次へ
全16ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング