て來たものと見え、しばしば實驗が不成功に陷つた。そればかりか、暗闇の中に於て、心靈が石原博士の横面を毆つて眼鏡を叩き壞したり、同伴の原阿佐緒女史の扇を心靈が引裂くなどの暴行があり、そこで博士はこれ以上の臨席は危險だと悟つて、それつきり出席されなかつた。博士は、生命の危險を感じたから、手を引いたのですと、私に語られたことがある。

   死後の世界

 一體心靈とは何であらうか。
 それは魂のことである。肉體の中に、魂が宿つてゐる。その魂が、肉體の死後、それから拔けだして、次の世界へ行く。
 その魂は、場合によつては元の世界に現はれることもある。
 この魂は、この世に肉體が出來る前からあつた。つまり魂は三世にまたがつて存在するのである。
 心靈研究者は、さう説いてゐる。
 或る一派では、四世にまたがつてゐるといつてゐる。すなはち、前の世、この世、次の世、もう一つ先の世、この四つの世がある。魂はこの四つの世を旅行するものだといふのである。
 芝居などで幽靈が姿をあらはし、恨みを含んだ目で、きつと睨み、細い手首でぐるぐると圓を描き『迷うたわい』と血を吐くやうな聲で訴へる。この幽靈も、肉體をは
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