味を持つ人々が、だんだん多く集つて來ると、心靈の科學的考察が盛んとなり、新しい科學の分野にわれこそ先に踏みこむのだといふ篤學の熱心家が現はれ、「心靈電子論」だとか、「心靈四次元論」だとか、「心靈三世説」とかを提唱して體系づけ、心靈の存在に確乎たる裏打ちを施すのであつた。電子論の上つ面だけしか知らない手合は、この論説にころりと參つてしまつて、次には自分がそれを説く立場へ進むのであつた。
理論の方は、山の芋のやうなもので、いくら捕へようとしても、ぬらぬらして、逃げられてしまふが、心靈實驗の物理化學的説明となると、これはなかなかうまく行かず、實驗の條件がどうのかうのとの爭ひが頻發し、揚句の果は、折角會の方へ半分位引摺りこんだ本格的理學者たちに逃げられてしまつたり、惡い場合は、尻尾をおさへられさうになつたりして、結論本格的學者からは見離されるに至つた。
石原純博士の如きは、ずゐぶん長期に亙つて熱心に心靈實驗に立合はれた一人である。其他、現存の權威ある博士達で、心靈研究會へ引張だされた人々は少くない。しかし石原博士が一番熱心のやうに見えた。
石原博士の臨席が、靈媒にとつてだんだん苦痛になつ
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