係の実相調査こそ、本事件を解くの正道だと考えた袋探偵は、隠しておいた無音オートバイにひらりと跨《またが》ると、さっきのクーペの後をめがけて大追跡に移ったのであった。
すばらしく鼻のきく袋猫々のことであるから、辻々に到れば、すなわち鼻をひくひくさせて、今福嬢の残香《のこりか》漂い来る方向を、嗅ぎあて、その方向へ驀《ひたす》らにすっとばしたのであった。そして約十五分間後、彼はロザリ倶楽部の玄関に着いた。
つづいて彼は倶楽部内に紛《まぎ》れこんだが、そこで彼は十分なる資料をつかんだ、今福嬢にぴたりとくっついて、一分間といえども離れないかの豪華版紳士がいよいよ以て烏啼天駆の変装なること、この二つが確認された。
そこで探偵は、倶楽部を出て、公衆電話函の中に入った。呼び出した相手は、余人ならず入院中の安東仁雄だった。
「あなたですな。お約束したものですから、その後の判明事項をご報告しますが、おどろいちゃいけません、心臓に悪いですからなあ」
「それはどうもすみません。何ですか、そのおどろいちゃいけないというのは……」
安東の声は落着きはらっていた。探偵は、今に先生びっくりするぞ。ひょっとする
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