んでしょう」
 帆村は謎を解き捨てた。
「綺麗な答えですわ。やっぱり奥へ行けばいいのでしたわね」
 春部は身を翻して奥へ駆入ろうとする。それを帆村が呀っと叫んで引戻した。
「待った、恐ろしい関があるんだ。この水銀灯の光だ。カズ子さん、このままあなたがこの小路を奥へ駆込めば、あなたの首はすっとんで、あたり一面はそれこそ唐紅《からくれない》ですぞ」
「まあ、恐ろしいことを仰有る」
「これを見てごらんなさい」
 帆村は前へ三歩進んで、洋杖を前方へ斜に突出し、それから徐々にその洋杖を奥の方へ深入りさせた。すると発止と音が鳴ったと思うと鋼鉄製の洋杖が石突のところから五寸ばかりが、すっぱりと切れて飛び、壁にあたってから下に落ちた。春部はびっくりしたが、訳が分らない。
 すると帆村は、洋杖を一旦引いてから、右側の壁にひそんでいるプロペラの兄弟みたいなものを指し、
「こいつが曲者なんです。こいつはここにひそんでいると見せて、実はあの軸を中心に、すごい勢いでプロペラのように廻っているのです。それがわれわれに見えないで、じっと静止しているように見えるのは、水銀灯のいたずらです。この水銀灯は恐らく千分の一秒
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