はっはっはっ、僕は莫迦だった。なんと頭の働きの悪い男だろう、はっはっはっ」
「せ、先生。どうなすったんですの」
春部の声に、帆村は自嘲を停め、
「カズ子さん、謎は解けました。全く子供騙しのような謎なんです」
「どうして、それが……」
「私はポン助だから、今気がついたのですよ。いいですか。ここは千早館でしょう」
「ええ、そうです」
「千早ふる神代もきかず龍田川――知っていますね。小倉百人一首にある有名な歌です。その下の句に、からくれないに水くぐるとは[#「からくれないに水くぐるとは」に傍点]とあるではありませんか。からくれない[#「からくれない」に傍点]とは、正面奥の、あの真赤に塗った壁です。水くぐる[#「水くぐる」に傍点]とはこの水族館です。左右の金魚槽の間を脱《ぬ》けて奥へ進めば、水くぐる[#「水くぐる」に傍点]です。最後の『とは』はすなわち『戸は』です。正面に見ているのは『戸ろ』だから、その隣りに『戸は』がある筈です。その『戸は』を開け――というのがこのところに集められた謎の解答なんです。行ってみましょう、この奥にある筈の『戸は』のところへ。それからきっと、秘密の間に続く道がある
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