だけ点火し、あとの千分の一秒は消えているのでしょう。そして千分の一秒点火したときだけ、ここを照らし、あの殺人回転刀――あのプロペラの兄弟のようなのがそれです――殺人回転刀を照らすのです。そのとき回転刀は、いつもあの位置にいるのです。つまり回転刀があの通り壁の中に入ったときに、水銀灯はちかっと光るのです。そうなると回転刀はあそこに静止しているように見えます。元来人間の眼は、残像時間が相当永いので、一秒間に二十四回以上断続する光は、それが断続するとは見えず、点《つ》け放しになっているように感ずるのです。だから、あのように一秒間に千回も断続する光があっても断続するとは感じないんです。春部さん。あの殺人回転刀の刃は、われわれの目には見えないが、そこに見える小路一杯に廻っているのですよ。だから今あなたがごらんになったように、洋杖の先がこのとおりすっぽりと切られたんです。このとおり切口は鮮かです。これじゃ軟い人間の首なんぞ一遍にちょん切れてしまいますよ」
 そういって帆村が見せた洋杖の先の切口は、磨いたように綺麗に斜めに切断されていた。春部の顔は真青になった。あのとき帆村がすぐ手を伸ばして自分を引
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