は、ざらにありますよ。さあ行きましょう。もし、チョークのついているところへ戻って来たら、知らせて下さい」
9
迷路は、とても長かった。
ようやく元のところへ戻って来たので時計を見ると、一時間五分経っていた。
帆村はそこで小憩をとることにした。彼はオーバーのポケットから、チョコレートとビスケットを出して、春部の手に載せてやった。そしてなお小壜に入ったウィスキーを飲むようにと彼女に薦《すす》めた。
「何も異状はなかったようね」
春部は、新しいチョコレートの銀紙を剥きながらいった。
「さあ、それはまだ断定できないです。今のは迷路を正しい法則に従って無事に一巡しただけなんです。これからもう一度廻ってみて、この迷路館が用意している地獄島を見付けださねばならないんです」
「何ですって。地獄島とおっしゃいましたか」
「いいました。地獄の島です。迷路の或るものには“島”というやつが用意されてあるんです。この島へ迷い込んだが最後、なかなかそこを抜け出すことが出来ないんです」
「わたくしには、よく意味がのみこめませんけれど……」
「島というのはねえ、そのまわりについていくらぐるぐるま
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