わっても、外へは出られないんです。そうでしょう、島ですからね。当人にそれが島だと気がつけば、そこで道が開けるんです。向いの壁へ渡っていけば、島を離れて本道へ出られるチャンスが開けるからです。しかしそれに気がつかないと、いつまでも島めぐりを続けて、遂には発狂したり斃《たお》れたりします」
「先生は、千早館にそのような島のあることを予期していらっしゃるんですか」
「有ると思いますよ。古神君は、迷路の島には異常な興味を沸《わ》かしていましたからねえ」
「島がみつかれば、どうなるんでしょう。そういえば私たちは、田鶴子さんの姿を見つけなかったし、田鶴子さんの憩《いこ》っている部屋も見かけなかったですわねえ」
「そのことです。島を探しあてることが出来たら、そこに何かあなたの疑問を解く手懸りがあるだろうと思っています」
「田川の居る場所は? いや、田川の死骸のある場所といった方がいいかも知れませんが……」
「まず迷路の島を。島が分れば田鶴子の居所が分る。田鶴子に会えば、田川君の所在が分る――と、こういう工合に行くと思うんです」
「まるで歯車が一つ一つ動き出すようなことをおっしゃいますのね」
「でも、
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