は、なぜだろうか。あ、そうか。ひょっとすると、その山がどこかというのが秘密なのではあるまいか。そしてその山からは、やがて尊《とうと》い鉱脈《こうみゃく》でも発見される見込みがあるのではなかろうか。
そう考えた彦太は、また遠慮なしに、そのことを五助にいった。すると五助は、一言のもとに打消した。
「ちがうさ。うちの兄さんは、そんな欲ばりじゃないよ」
「じゃあ、どこの山。山の名を聞かせてくれたっていいだろう」
彦太は五助を追いつめた。五助は見るもかわいそうなほど悩みの色をうかべていたが、やがて決心したものと見え、立上って彦太の傍へ席をうつした。そしてあたりを見まわした上で、彦太の耳の近くで低い声を出した。
「誰にもいっちゃいけないよ。そして君もおどろいてはいけないよ」
「誰がそんな秘密をもらすものかい。もちろん、おどろきやしないよ」
「さ、どうかなあ。で、その山というのはね、あの青髪山《あおがみやま》なのさ」
「えっ、青髪山! あの、誰も近づいちゃいけないという……」
「大きな声を出すなよ」
ふーんと彦太は呻《うな》った。彼の顔色は、とたんに青ざめていた。青髪山か。青髪山ならたいへんで
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