ないようにせよ。相手はなかなかゆだんがならない怪物だよ――
 あっ、また怪物どもがおしよせて来たようだ。兄さんはもう助からない。ピストルの弾丸のつづくかぎりうって――もう二発しかないが――あとは彼らにからだをまかすしかない。さよなら五助。みんなによろしく。
[#地から3字上げ]一造

「ああ、かわいそうに。君の兄さんは最後のピストルを二発うって、怪物につかまったんだよ。ぼくらがもっと早く来ればよかった」
「いや、ぼくらが早く来れば、ぼくらもまた怪物につれていかれたかもしれない。兄さんはぼくたちの生命をすくってくれたことになるんだ」
「なるほど、そうだったね。五助ちゃん、もっと奥を探してみようか」
「いや、よそう。兄さんは、危険だから早くふもとへひきあげろと書置《かきおき》してある。さあ早く穴を出ようや」
「そうかい、ざんねんだなあ」
 二少年は、思い切って穴から外にはい出した。ところが、そのすぐあとで、どういうわけか、とつぜん地鳴りとともに大山つなみが起った。そして穴のあったところはすっかり岩石の下にうまってしまった。二少年は生命《いのち》からがら山をかけ下って、ふもとの村へかえりつい
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