めて生命を拾ったことを知って安心した。二人とも雪の中にぶったおれて、しばらくは起上る元気もなかった。
やがて二人が元気をとりもどして雪の上にむっくり起上ったとき、雪はもうやんでいて、あたりは明るさを増していた。そして二人の目にうつったものは、ものすごい雪崩のあとであった。さっきまで二人が走っていたところは、もうすっかり雪の下になっていた。観測所のあった雪穴なんか、もうはるかの底になってしまった。
「ああ、こわかったねえ」
「もう死ぬかと思ったよ。兄さんはどうしたかしらん」
「さあ、困ったねえ」
とうとう一造の所在をたしかめないうちに、このとおり雪崩になってしまったのだ。一造の生死のほどが一層心配になってきた。彦太は何とかして五助を安心させたいと思ったけれど、そんな材料はなんにも見あたらなかった。だが一つ、そのとき気がついたことがある。
「五助ちゃん。今ごろ雪崩が起るというのはへんだね。まだ早すぎるじゃないか」
「そうなんだ」と五助はうなずいた。
「しかしさっきの銃をうったあの響で、雪崩が起ったのかもしれない」
「そんなことがあるもんかなあ」
「たまにはあるんだよ。しかし、どっちかと
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