いるものではない。私の睨んだところでは、あの赤耀館の主人公は松木亮二郎その人であって、決して笛吹川画伯の化けたのではないと思っている。さもそうらしいようなことを言ったのは、彼の一家の特質を享《う》けついでいる彼として、犯罪とか極悪人とかへのやけつくような憧憬から生れ出た妄想を、其の儘、事実らしく物語ったものであろう。従って「赤耀館事件の真相」もどこからどこまでが、本当にあったことかわからないのである。私の元気がもっと恢復したらば、もう一度あの話を考え直してみたいと思っている。



底本:「海野十三全集 第1巻 遺言状放送」三一書房
   1990(平成2)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「新青年」博文館
   1929(昭和4)年10月号
※「湿度・気温・気圧曲線」の図は、初出からスキャンし、つぶれのはなはだしい文字を入力し直しました。その際、「午后」を「午後」に、「粍」を「ミリメートル」に置き換えました。
入力:tatsuki
校正:土屋隆
2004年11月8日作成
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