しい貴女が私の側についていて下さる間は、赤耀館にはなんの惨劇も起り得ないのです」
尾形警部はそのとき、気をきかせて、室をしずかに出て行きました。それからのちのことは説明するまでもないことです。
これで赤耀館事件の真相をすっかり話してしまったことになりました。この話の結びとして、最後に言いのこしたことをよく味《あじわ》っていただきたいと思います。この事件の結末は、まだ本当についていないのです。それは笛吹川画伯の行方が、一年この方、いまだに知れないことに在るのです。彼は一体、どこに居て、何をしているのでしょう。
これがもし貴方のおすきな探偵小説であったとしたならば、これだけの物語を以て、なんと結末をおつけになりますか。若し私が貴方の立場に居たとして、自然な結末をつけるものとすれば、先ずこんな風に考えてみてはどうでしょう。ここは門司の埠頭《ふとう》です。一人の青年が東京へ急ぐこころを押《おさ》えて、大きな汽船から降り、倉庫のあたりを一人で静かに散歩していたとしましょう。そのとき背後から二人の怪漢が忍び寄り、呀っという間に青年の頭から、南京米の袋をかぶせてしまった。怪漢はこの袋を楽々とか
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