引きはがすほどの徹底さを以て探査をすすめられた結果、数束の嫂へあてた手紙が悉《ことごと》く其の筋へ押収せられました。中でも尾形警部が、特に注意して読んだものは、兄丈太郎から貰ったものの外に、笛吹川画伯、勝見伍策、それから私からの手紙でありました。
嫂の屍体は、入念に法医学教室で解剖に付せられましたが、消化器と循環器との系統のものは、どんな微細な点までも、剖検《ぼうけん》されたのです。
「お嬢さん、今度はすこし手応《てごた》えがあったようですよ」と尾形警部が、心持ち顔を明るくしながら言ったことです。「お姉様の死は、疑いもなく青酸中毒から来ているのです」
「青酸中毒でございますって? では姉は殺されたので御座いますか、それとも自殺でございましょうか」百合子は身を震《ふる》わせながら警部の言葉を待ちました。
「他殺か自殺か、それは未だ残された問題なのです。ですが解剖の結果、青酸中毒の反応が充分出て来たことと、青酸加里を包んであったらしいカプセルの一部が胃の中に発見せられました。それからお姉様の枕頭にはレモナーデのコップがあったのです。覚えていらっしゃいますか、お兄様の死体の側にもレモナーデ
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