すまぬ足を運んで行ったのです。
 築地の川べりに近く、真黄色な色にぬられた九階だての塔のような建物がありますが、それがそのホテルなのです。入って行きますと、見知り越しの尾形警部が、いまにも仆れそうな青い顔をして、百合子を迎えましたが、すぐ現場へ案内して呉れました。それはバスルーム付きの十六畳もあろうと思われる大きな贅《ぜい》を尽した部屋でした。室の一隅には、大型のベッドが二台並んでいます。その一方に死んでいるのが、紛《まご》う方《かた》なき嫂の綾子なのでした。
「一体どうしたのでございましょう?」百合子は縋《すが》りつかんばかりにして尾形警部に尋ねかけたのでした。
「さあ、どうしたものですか」と警部もすこし顔を和げてこれに答えました。「今度は一つ徹底的な捜査をしたいと思っています。幸《さいわい》に事件は私に委されましたし、現場もこの通りあまり荒されていませんので、きっと何か判ることと思います。その前に是非とも貴女にお伺いしたいことがあるのですが……」
 と百合子を別室に導き、嫂の近情や、家を出た前後の模様などを訊《たず》ねました。
 赤耀館は厳重な家宅捜査をうけ、ことに嫂の室は壁紙まで
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