て、外にはないようです」
「どんな風に倒れましたか」
「すこし興奮した様子で、安楽椅子から立ち上りましたが、ウンと言うなり床の上に倒れたのです。その時、卓《テーブル》を倒したものですから、その上に載っている茶碗などが壊れてしまいました」
「対談中、だれかこの部屋に入って来たものはありませんか」
「執事の勝見が案内して来たのと、姪の百合子がお茶などを運んで来たきりでした」
「貴方が中座されたようなことはありませんか。又は画伯のことでもいいのですが」
「私は中座しなかったように思います。画伯も中座しなかったろうと思いますが、よく気をつけていませんでした」
「よく気をつけていなかったとは、どういう意味ですか」
「一寸しらべものをやっていたので、注意力が及ばなかったかも知れないというのです」
「対談中、お仕事をなさっていたのですナ」
「まア、そうです」
「お話はどんな種類のことですか」
「そ、それは、まア早く言えば僕等の新婚生活をひやかしていたのです」
「ハア、なるほどそうですか。奥様はどちらにいらっしゃいますか」
「一寸おひるから友達のところへ出掛けましたがネ、もう帰って来る頃でしょう」
「
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