場のように細長い室だが、手前の方に、拳銃《ピストル》を並べてある高い台があって、遥《はる》か向うの壁には、大きな掛図《かけず》のような的《まと》がかかっていた。その的というのは、白い紙の上に、水珠《みずたま》を寄せたように、茶椀《ちゃわん》ほどの大きさの、青だの、赤だの、黄だの円《まる》が、べた一面に描いてあって、その上に5とか3とかいう点数が記してあった。
「僕やってみましょうか」帆村は気軽に拳銃《ピストル》をとって、覘《ねら》いを定《さだ》めると、ドーンと一発やった。3点と書いた大きな赤円《あかまる》に、小さい穴がプスリと明いた。
「どうです。相当なものでしょう」
そういいながら、彼は次から次へと、あまり点数の多くない色とりどりの円を、撃ちぬいていった。
「今度は、ダリアさん、やってごらんなさい」帆村は拳銃を彼女の方に薦《すす》めた。
「エエ――」とダリアは答えたが、「あたし、よすわ」とハッキリ云った。
「そんなことを云わないで、やってごらんなさいな」
「だってあたし……あたし、眼が悪くて駄目なんですわ」
そういってダリアは、カラカラと男のような声で笑った。
まだ時間はあった
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