から、二人は食堂へ行った。そこでオレンジ・エードを注文して、麦藁《むぎわら》の管《くだ》でチュウチュウ吸った。
「警視庁なんてところ、随分《ずいぶん》開けてんのネ」ダリアは、帆村をすっかり友達扱いにしていた。
「それはそうですよ。貴女《あなた》みたいな方をお招きすることもありますのでネ」
「だけど、このオレンジ・エード、なんだか石鹸くさいのネ。あたし、よすッ」
 半分ばかり吸ったところで、ダリアは吸管《すいくだ》を置いた。
 そんなことをしている裡《うち》に時間が経って、警官がわざわざ二人を探しに来た程だった。
 階段を地下へ降りて、長い廊下をグルグル廻ってゆくと、大変天井の低い暗いところへ出た。例の赤外線男が出て来そうな気配《けはい》だったが、しかし仄暗《ほのぐら》いながら電灯がついているから停電でもしない限り先《ま》ず大丈夫だろう。
 映画検閲用の試写室は、思いの外《ほか》、広かった。壁は一様にチョコレート色に塗ってあり、まるで講堂のような座席が並んでいた。正面には二メートル平方位のスクリーンがあった。
 もう七八人の人が入っていた。雁金検事、中河判事、大江山捜査課長の顔も見えた。
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