長は、面目《めんぼく》なげに下俯《うつむ》いた。
「深山氏とダリア嬢は、調べましたか」
「今度こそはというのでよく調べました。身体検査も百二十パーセントにやりました。ダリア嬢も気の毒でしたが、婦人警官に渡して少しひどいところまで、残る隈《くま》なく調べ、繃帯《ほうたい》もすっかり取外《とりはず》させるし、眼鏡もとられて眼瞼《まぶた》もひっくりかえしてみるというところまでやったんですが、何の得《う》るところもありません」
「ダリア嬢の眼はどうです」
「ますますひどいようですよ。左眼《さがん》は永久に失明するかも知れません。右眼も充血がひどくなっているそうです」
「ダリア嬢は眼のわるい点でいいとして、深山氏の行動に不審はなかったんですか」
「ところが深山氏は閣下にいろいろと詳《くわ》しく説明していた最中《さいちゅう》なのです。深山氏が喋《しゃべ》っているのに、閣下はウーンといって仆《たお》れられたのです。深山氏を疑うとなれば、喋っていながら手を動かして鍼《はり》を突き立てるということになりますが、これは実行の出来ないことですよ」
「すると二人の嫌疑は晴れたのですか」
「まあ、そうなりますネ
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