分にして、この装置で丹念《たんねん》に赤外線男を探しあてようというのです。深山さんに白丘さんと、お二人に来て貰って取付けました。実験は午後三時から開始するつもりで、貴方《あなた》にもお出で願うよう申上げて置きましたが、先刻《さっき》総監閣下が急に見たいと仰有《おっしゃ》るので到頭《とうとう》ご覧に入れちまったのです」
「そりゃ拙《まず》かったですネ」と帆村は腹立たしそうに云った。
「私ども始めはお止《と》めしたのです。しかし閣下は他出《そとで》される約束があって、その日の三時にはご覧《らん》になれないのです。それで強《し》いてというお話ですし、一方例の用意もありまして大丈夫だと思ったのです」
 例の用意というのは、深山理学士と白丘ダリア嬢には秘密で、この室内の一隅に小さい赤外線|発生灯《はっせいとう》を点じ、隠し穴を通じて隣室からこの室内を活動写真に撮《と》る。つまり肉眼で見えぬ光線を室内に送って置いて、室内の人々の動静《どうせい》を赤外線映画に収めてしまう。斯《こ》うすれば、その中で怪《あや》し気《げ》な行動をする者がフィルムの上に映《うつ》った筈だから、後で現像すればそれと判る――
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