ろですから、さあ誰方《どなた》も変りあってスクリーンを覗いて下さい」理学士が器械から離れながら云った。
「さあ順番に見ようじゃないか」検事が後の方から声をあげた。
 ゴトリゴトリと靴音がして、スクリーンの前に観察者が入れ代っているようだった。
「どうも赤外線写真というものは、色の具合が、死人の世界を覗いているようだな」判事さんが呟《つぶや》きながら視《み》ている。
 そのとき真暗《まっくら》だった室内へ、急に煌々《こうこう》たる白光《はっこう》がさし込んだ。
「呀《あ》ッ!」
「どッどうしたんだ」理学士が叫んだ。
 一つの窓のカーテンが、サーッとまくられたのだった。皆の眼は、この眩《まぶ》しい光に会ってクラクラとした。
「いいえ、何でもないのです。失礼しました」と、窓のところでダリアの声がした。
「困るじゃないか」深山は云った。
「アノちょっと何だか、あたしの身体になんだか触《さわ》りましたのよ。吃驚《びっくり》して、窓をあけたんですの」
「ああ、もう出たかッ――」
「赤外線男!」
「窓を皆、明けろッ!」
 そのとき白丘ダリアは朗《ほが》らかな声で云った。
「いいえ、大丈夫ですわ。カー
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