テンを明けてみましたら、帆村さんのお臀《しり》でしたわ。ホホホ」
「なあーンだ」
 一座はホッと溜息《ためいき》をついた。
「じゃ早くカーテンを下ろしなさい」
「済《す》みません」
 カーテンはパタリと下りた。元の暗闇が帰って来たけれど、皆の網膜《もうまく》には白光が深く浸《し》みこんでいて、闇黒《あんこく》がぼんやり薄明るく感じた。スクリーンの前では雁金検事が、しきりに眼をしばたたいていた。
 ウームというような低い呻《うな》り声が聞えたと思った。ドタリ……と、大きな林檎《りんご》の箱を仆《たお》したような音が、それに続いて起った。
 素破《すわ》、異変だ!
「どッどうした」
「まッ窓だ窓だ窓だッ」
「ランプ、ランプ、ランプ!」
 さーッと、窓から白光《はっこう》が流れこんだ。ネオン灯もいつの間にか点いた。
「キャーッ」と喚《わめ》いてカーテンに縋《すが》りついたのは、窓のところへ駈けよったばかりの白丘ダリアだった。床の上には、幾野捜査課長が土のような顔色をし、両眼《りょうがん》を剥《む》きだし、口を大きく開けて仆れていた。
 もう赤外線テレヴィジョンも何もなかった。窓という窓は明け
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