てこんな繃帯をしているのだろう。それに黒眼鏡《くろめがね》なんか掛けて……と不思議に思った。
一行中の新顔《しんがお》である帆村探偵が、深山《みやま》理学士と白丘ダリアとに、先《ま》ず紹介された。
「いや、ダリアさんですか、始めまして」と帆村は慇懃《いんぎん》に挨拶をして「その繃帯はどうしたんです」と尋《たず》ねた。
課長はこの場の様子を見て、いつもながら帆村の手廻しのよいのに呆《あき》れ顔だった。
「これですか」少女はちょっと暗い顔をしたが「すこしばかり怪我《けが》をしたんですの。繃帯をしていますので大変にみえますけれど、それほどでもないのです」
「どうして怪我をしたんですか」
「いいえ、アノ一昨晩《いっさくばん》、この部屋で寝ていますと、水素乾燥用の硫酸《りゅうさん》の壜が破裂をしたのです。その拍子《ひょうし》に、棚《たな》が落ちて、上に載《の》っていたものが墜落《ついらく》して来て、頭を切ったのです」
「そりゃ大変でしたネ。眼にも飛んで来たわけですか」
「何しろ疲れていたもので、直《す》ぐ起きようと思っても起き上れないのです。先生は直ぐ駈けつけて下さいましたけれど、あたくしが
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