青年で、科学の方面にも相当明るいという人物だった。
こうして取調べも一と通り終り、報告書も作られたけれど、直接の被害の中にとうとう洩《も》れてしまった一つの重大なる品物があった。それは深山理学士が戸棚の中に秘蔵《ひぞう》していた或る品物だったが、彼はそれを係官に報告しなかった。それは決して忘れたわけではなくて、故意《こい》に学士の心に秘《ひ》めたものと思われる。一体、その品物はどんなものだったか。
とにかく深山学士研究室の襲撃事件によりて、赤外線男の生態《せいたい》というものが、大分はっきりしてきた。
5
帆村探偵を交《ま》ぜた係官の一行が、深山理学士の研究室を訪ねたのは、新しい赤外線テレヴィジョン装置が出来上ったという其《そ》の日の夕刻のことだった。折角《せっかく》作った一台は、無惨《むざん》にも赤外線男の破壊するところとなり、学士も助手の白丘《しらおか》ダリアも大いに失望したが、その筋《すじ》の希望もあって、二人は更《さら》に設計をやり直し、新しい装置を昼夜兼行《ちゅうやけんこう》で組立てたのだった。白丘ダリアは、この事件以来というものは、住居《じゅうきょ》
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