はこの運動場を人間のような恰好して歩いていたというぞ。してみれば、赤外線男とて、地球の重力《じゅうりょく》をうけて歩いているので、空中を飛行しているわけではない。だから身体は見えなくても、大地《だいち》に接するところには、赤外線男の足跡が残らにゃならんと思うよ」
「足跡が見えるなら、靴も見えたっていいでしょう。すくなくとも、靴の裏は見えたっていいわけです。そこには我々の眼に見える泥がついているのですからネ」
課長と検事とは喋っていながらも、この難問題が自分たちの畠《はたけ》ではないことに気がついた。
「ねえ、君」と検事が鼻に小皺《こじわ》をよせて囁《ささや》くように云った。「これはどうも俺たちの手にはおえないようだよ。第一、知識が足りない」
「そうですヨ」と課長も苦笑した。
「仕方がないから、これは一つ例の男を頼むことにしてはどうかネ。帆村荘六《ほむらそうろく》をサ」
「帆村君ですか。実は私も前からそれを考えていたのです」
二人の意見は直ぐに纏《まとま》った。そして新《あらた》に呼び出されるべき帆村荘六という男。これはご存知の方も少くはないと思うが、素人探偵として近頃売り出して来た
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