ないのです。しかし身体の自由は失われて、恐ろしい力がヒシヒシと加わり、骨が折れそうになるので、思わず『痛い、助けて呉《く》れ』と怒鳴《どな》りました。ところがイキナリ、ガーンと頭へ一撃くってその場へ昏倒《こんとう》してしまったのです。それから途中、全然記憶が欠《か》けているのですが、イヤというほど横《よこ》ッ腹《ぱら》に疼痛《とうつう》を覚えたので、ハッと気がついてみますと、私は妙なところに載《の》っているのです。それが先刻《せんこく》、皆さんから降ろしていただいたあの背の高い変圧器の上です。口には猿轡《さるぐつわ》を噛《か》ませられ、手は後に縛られ、立ち上ることも出来ない有様です。下を見ると、これはどうでしょう。奇々怪々な光景が悪夢《あくむ》のように眼に映ります。実験戸棚の扉《ドア》が、風にあおられたように、パターンと開く、すると棚《たな》に並べてあった沢山の原書《げんしょ》が生き物のようにポーンポンと飛び出してきては、床の上に落ちる。引出しが一つ一つ、ヒョコヒョコ脱け出して飛行機の操縦のようなことをすると、中に入っていた洋紙《ようし》や薬品の小壜《こびん》などが、花火のように空中に
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