かり、儂《わし》は元の室の土間《どま》の上に転《ころ》がっているという始末《しまつ》。それから駭《おどろ》いて窓から外へ飛び出すと、門衛《もんえい》のいますところまで駈けつけて、大変だと喚《わめ》きましたようなわけです」
「すると、お前が脾腹をやられたとき、何か人の形は見なかったか」
「それが何にも見えませんでございました」
「序《ついで》に聞くが、お前は赤外線男というのを聞いたことがあるか」
「存じて居ります。昨夜のあれは、赤外線男でございましたでしょうか」老人は急に臆気《おくき》がついてブルブル慄《ふる》え出した。
課長は、用務員を下げると、今度は深山理学士を呼び出した。
「昨夜、貴方の襲撃された模様をお話し下さい」
「どうも面目次第《めんぼくしだい》もないことですが」と学士はまず頭を掻《か》いて「何時頃だったか存じませぬが、研究室のベッドに寝ていた私は、ガタリというかなり高い物音に不図《ふと》眼を醒《さま》してみますと、どうでしょうか。室の入口の扉《ドア》の上半分がポッカリ大孔《おおあな》が明いています。これは枕許《まくらもと》のスタンドを点《つ》けて寝るものですから、それで判
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