びていった。
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「赤外線男《せきがいせんおとこ》というものが棲《す》んでいる!」
途方《とほう》もない「赤外線男」の存在を云い出したのは、外《ほか》ならぬ深山《みやま》理学士だった。それは苦心の赤外線テレヴィジョン装置が組上ってから二日ほど後のことだった。
大胆《だいたん》といおうか、気が変になったといおうか、深山理学士の発表に駭《おどろ》いたのは、学界の人達ばかりだけではなかった。逸早《いちはや》く帝都の諸新聞紙はこの発表をデカデカの活字で報道したものだから、知ると識《し》らざるとを問わず、どこからどこの隅々《すみずみ》まで、一大センセイションが颶風《ぐふう》の如く捲《ま》きあがった。
「赤外線男というものが棲《す》んでいるそうだ」
「そいつは、わし等の眼には見えぬというではないか」
「深山理学士の何とかという器械で見ると、確かに見えたというではないか」
などと、人の噂は千里を走った。
なにが「赤外線男」だ?
深山理学士の言うところによれば斯《こ》うだ。
「予《よ》はかねて学界に予告して置いた赤外線テレヴィジョン装置の組立てを、此《こ》の程《ほど》完成し
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