けど、伯父が呼ばれたんで、あたしも附いてこいというので行ってたんです。伯母《おば》さんが一週間ほど前に行方不明になったんで、そのことで行ったんですよ。随分《ずいぶん》この事件、面白いのよ。ひとには云えないことなんです、ですけれど……」
ひとには云えないといいながら、白丘ダリアは、それこそ油紙に火がついたようにベラベラ事件を喋《しゃべ》り出した。
簡単に云うと、失踪《しっそう》した伯母さんというのは二十六歳になるひとだった。伯父との仲も大層よかったのに、一週間ほど前に急に行方不明になってしまった。遺書でもないかと調べたが、何一つ書きのこされていなかった。全く原因が不明だった。
例の身許《みもと》の知れぬ轢死《れきし》婦人のことも、一度は問題になったが、着衣も所持品も違っていた。といって外《ほか》に年齢の点で似合わしき自殺者もなかった。生か死かも判然しなかった。伯父は捜索につかれ切って半病人になってしまった。そこへ警視庁から重《かさ》ねての呼び出しが来たので今朝、姪《めい》のダリアを介添《かいぞ》えに桜田門《さくらだもん》へ行ったというのだ。
本庁では、伯父に対して、どんな些細《さ
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