」若き女性は云った。
「そうです、深山ですが……」
「あたくし、理科三年の白丘《しらおか》ダリアです。先生のところで実習するようにと、科長《かちょう》の御命令で、上りましたのですけれど」
「ああ、実習生。――実習生は、君だったんですか。じゃ入りなさい」
男の学生だと思っていたのに、やって来たのは、意外にも女学生だった。しかし何という逞《たく》ましい女性なんだろう。近代の女性は、スポーツと洋装とのお蔭で、背も高くなり、四肢《しし》も豊かに発達し、まるで外国婦人に劣らぬ優秀な体格の持ち主になったという話だったが、それにしてもこの健康さはどうだ。これが女性というものなんだろうか。深山理学士は早くもこのピンク色の物体が発散《はっさん》するものに当惑《とうわく》を感じた。
「ダリアという名前だが」と学士は訊《たず》ねた。
「失礼ながら君は混血児なのかい」
「まあ、いやな先生!」彼女は仰山《ぎょうさん》に臂《ひじ》を曲げ腰をゆがめてカラカラと笑った。「これでも日本人としては、純種《サラブレッド》ですわヨ」
「純種《サラブレッド》か! イヤ僕は、君があまりにデカイもので、もしやと思ったんだよ」
「
前へ
次へ
全93ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング