先生は、小さくて可愛いいんですのネ」彼女は肥った露《あらわ》な二の腕を並行にあげて、取って喰うような恰好《かっこう》をしてみせた。
そんなことから、先生の深山理学士と生徒の白丘ダリアとは、何でもずかずかと云い合う間柄《あいだがら》になった。しかしこの少女が、まだ十八歳であるとは、学士の容易に信じかねるところであった。
赤外線研究室は、この先生と生徒とによって、昼といわず夜といわず、乱雑にひっかきまわされた。精密な部分品が、さまざまの実験を経《へ》て一つ又一つと組立てられていった。二人の熱心さは大変なものだった。入口の扉《ドア》にはいつものように鍵がかかっていた。食事を搬《はこ》んでくるときと、白丘ダリアが夜更《よふ》けて自分の住居へ帰るときの外は、滅多《めった》に開《ひら》かれはしなかった。深山理学士は独り者の気楽さで、いつもこの研究室に寝泊りしていた。
「アラ先生、まあ面白いことを発見しましたわ」ネジ廻しを握って、器械のパネルに木ネジをねじこんでいたダリアが、頓狂《とんきょう》な声を張りあげた。
「どうしたんだい」深山学士は増幅器《ぞうふくき》の向うから顔を出した。
「とても面白
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