ころがもしこの廊下に人が通って赤外線を遮《さえぎ》ると、どうなるかというのに、赤外線は人体で遮られ、光電管には今まで流れていた電気がハタと止るから、従ってピストルの引金を動かないように圧《おさ》えていた力がぬけ、即座《そくざ》にズドンとピストルが発射され、その人間を斃《たお》す……という中々面白い方法だ。赤外線だから、その被害者の眼に見えなかったので、仕方がない。
 満洲の重要な橋梁《きょうりょう》の東|橋脚《きょうきゃく》から西橋脚の方へ向け、この赤外線を通し、西の方に光電管をとりつけ、光電管から出る電気で電鈴《でんれい》の鳴る仕掛《しか》けを圧《おさ》えておく。若《も》し匪賊《ひぞく》が出て、この橋脚に近づき、赤外線を遮《さえぎ》ると、直ちに光電管の電気が停るから、電鈴を圧えていた力は抜け、電鈴はけたたましく匪賊|襲来《しゅうらい》を鳴り告げる。これも赤外線が見えないところを利用したものである。
 深山《みやま》理学士の研究問題は、この不可視光線《ふかしこうせん》と呼ばれる赤外線が人間にも見える装置を作ることにあった。彼は、これを近頃流行のテレヴィジョンに組合わすことに眼をつけた。
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