前|英国《えいこく》で、列車大衝突《れっしゃだいしょうとつ》の大椿事《だいちんじ》をひきおこしたことがあったが、そのときのぶっつけた方の運転士は、色盲《しきもう》だったことが後に判明して、無期懲役の判決をうけたのが無罪になった。人間の視力なんて、まことに不思議なものであり、又デリケートなものである。そして紫から赤までしか見えないなんて、貧弱きわまる視力ではある。
話が色盲の方へ道草をしてしまったが、この赤外線という光線は、人間の眼に感じないとされているだけに、秘密の用をつとめるとて、重宝《ちょうほう》されている。甲賀三郎《こうがさぶろう》氏の探偵小説に「妖光《ようこう》殺人事件」というのがあるが、それに赤外線を用いた殺人法が述《の》べられている。それは赤外線警報器を変形したもので、殺そうという人の通路に赤外線を左の壁から右の壁へ、噴水《ふんすい》を横にとばしたように通して置くのだ。右の壁の中には光電管といって赤外線を感ずる真空管のようなものが秘密に仕掛けてある。人の通らぬときは、赤外線がこの光電管に入って電気を起こし、ピストルの引金をひっぱろうとするバネを動かないように止めている。と
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