いなん》を望んだとすると、東京湾が見え、その先に伊豆半島《いずはんとう》が見える位が関の山だが、赤外線写真で撮すと、雲のあなたに隠れて見えなかった静岡湾《しずおかわん》を始め伊勢湾《いせわん》あたりまでが手にとるように明瞭《めいりょう》に出る。
この紫外線も赤外線も、同じ光線でありながら、普通《ふつう》、人間の眼には感じない。つまり人間の網膜《もうまく》にある視神経《ししんけい》は、紫から赤までの色を認識することが出来るが、紫外線や赤外線は見えないといえる。
見えないといえば、色盲という眼の病気がある。これは赤が見えなくて、赤い日の丸も青い日の丸としか感じない人達がいる。それは視神経の疾患《しっかん》で、生れつきのものが多い。ひどいのになると、七つの色のどれもが色として見えず、世の中がスクリーンにうつる映画のように黒と灰色と白の濃淡にしか見えない気の毒な人がいて、これを全色盲《ぜんしきもう》と呼んでいる。軽い色盲でも、赤と青とが判別出来ないのであるから、うっかり円タクの運転をしていても、「進め」の青印と、「止れ」の赤印とをとりちがえ、大事故を発生する虞《おそれ》がある。現に十年ほど
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