成層圏飛行と私のメモ
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)素人《しろうと》の私に
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 成層圏飛行について、なにか書けという注文である。
 素人《しろうと》の私に、なにが書けるわけのものでない。が、素人をむき出しにして、専門家のいわないことをのべてみるのも、一興《いっきょう》であろうと思い、ペンをとりあげた。
 一体、成層圏とは、どんな高さの空で、そこではどんなことが特徴になっているのか、これは素人のわれわれが一番初めに知りたいところである。これについては、何べんか調べて、そのときは憶えているくせに、間もなく忘れてしまう。身につかないことは、仕方のないものである。
 私の調べによって、素人の一等知りたいところを述《の》べると、成層圏の高さは、まず海面から測って、十キロメートル以上五十五キロ以下の空中をいうのである。この成層圏の性質は、もちろん、空気は稀薄《きはく》であり、水蒸気は殆どなく、温度も摂氏《せっし》の氷点下五十何度という寒冷さにおかれ高層にのぼるほど多少温度が上昇する傾向がある。それから高気圧も低気圧もあらわれず、風はいつもしずかに一
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