《けいがん》なる彼女の小さな眼に映《えい》じた一つの異変! それは高い天井の隅にある空気抜きの網格子《あみごうし》が、ほんのちょっと曲っていたことである。それに気がついて、大理石《だいりせき》の洗面器の傍にかかっているタオルを見ると、これが真黒になってよごれていた。
(たしかにそうだわ。例の重要物件は、旦那様の懐中を出て、あの空気抜きの網格子《あみごうし》をあげて、天井裏《てんじょううら》に隠されたのにちがいない!)
光枝の胸は、またどきどきしてきた。じつに大発見である。
光枝は、じっとしていられない気持になって、ハガキを握ると、ポストのところへいってみた。まさかこの早朝から、そこに帆村が来ているとは思わなかったけれど、家にじっとしていることには耐えられなかったのだ。
「やあ、とうとう突留《つきと》めたかね」ポストのかげから、帆村がぬっと顔を出して、いきなりそういったものだから、光枝はびっくりした。
光枝の報告は、帆村を躍りあがって悦《よろこ》ばせた。そして二人は、連立ってお屋敷の方へ引返した。その途中、帆村が早口にいった話によると、
「もう隠す必要はないだろうが、あの大将は、じ
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