こ?」
「ほほほほ、ほんとはもう一つ上の十九ですけれど」と、光枝は嘘をついた。
「へえー、お前さん、十九かい。まああきれたわね。わたしゃ十六七とばかり思っていたよ。じゃあもう色気《いろけ》もたっぷりあって――旦那様もなかなか作戦がしっかりしていらっしゃるわね。へえ、そうかい、十九とは……」お紋は、ひとりで感心していた。
「あのう、うちの旦那様の御商売は、なんでいらっしゃいますの」
「ああら、あんたそれを知らないで来たの」
「ええ」
「ずいぶん呑気《のんき》な娘ね。知らなきゃ、いってきかせるが、うちの旦那様はやま[#「やま」に傍点]を持っていらっしゃるのよ」
「え、やま[#「やま」に傍点]? 鉱山《こうざん》のことですの」
「そうそうその鉱山よ。金銀銅鉄|鉛《なまり》石炭、なんでも出るんですって。これは内緒《ないしょ》だけれどね、うちの旦那様は、お若いときダイナマイトと鶴嘴《つるはし》とをもって、日本中の山という山を、あっちへいったりこっちへきたり、真黒になって働いておいでなすったんですとさ。つまり、鉱夫をなすっていらっしゃったのよ。そんなこと、わたしが話したといっちゃいやーよ。わたしゃ
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