し開いて隣室に飛びこんだ。
「呀《あ》ッ」
一同はその場に立ちすくんだ。
真正面の大きい窓硝子が滅茶滅茶《めちゃめちゃ》に壊《こわ》れて、ポッカリ異様な大孔《おおあな》が出来、鉄格子《てつごうし》が肋骨《ろっこつ》のように露出していた。その窓の下に寝台があって、その上に寝ているのは重症の赤星龍子だった。ああしかし無惨《むざん》なことに、龍子の胸から下を蔽《おお》った白い病衣のその胸板《むないた》にあたる箇所には、蜂の巣のように孔があき、その底の方から静かに真紅な血潮《ちしお》が湧きだしてくるのだった。この場の光景は、何者かが窓外《そうがい》にしのびより、寝ている龍子に銃丸の雨を降らしたことを物語っていた。射ったのは誰だ。
「帆村さん、とうとう掴《つかま》えましたよ」
格子《こうし》の外に近付いた人の顔がある。それは白い記者手帳を片手にもった東京××新聞の記者|風間八十児《かざまやそじ》だった。その後には雁字搦《がんじがら》めに縛られた男が、大勢の刑事に守られて立っていた。
それは捜査課長に馴染《なじみ》の深い探偵小説家を名乗る戸浪三四郎の憔悴《しょうすい》した姿だった。
「帆村
前へ
次へ
全54ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング