をごまかすために、多田さんが唯今お持ちになったピストルを、軟《やわらか》い地面に向けて射った後、土地を掘りかえして弾丸《だんがん》を掘りだしたんです。犯人は、こうしてピストル特有の溝跡がついた弾丸を、又別に持っている無螺旋《むらせん》のピストル、それは多分、上等の玩具《がんぐ》ピストルを改造したんだろうと思われますが、その別なピストルに入れて、省線電車の中に持ちこんだんです。よく調べてごらんなさい。屍体《したい》の中から抜きとった弾丸には、薬莢にとめるときについた鍵裂《かぎさけ》の傷がついています」
大江山警部は、この執念ぶかい犯人のトリックに、唯々《ただただ》呆《あき》れるばかりだった。
「すると真犯人は玩具ピストルに、この弾丸《たま》を籠《こ》めたのを持っているんですな。笹木君は犯人ではないのですか」
「笹木君ではありません」と帆村が言下《げんか》に答えた。
「では犯人の名は……」
その瞬間だった。
「ガチャリッ」と硝子《ガラス》の破れる音が隣室《りんしつ》ですると、屋根から窓下にガラガラッと大きな物音をさせて墜落《ついらく》したものがある。ソレッというので一同は扉《ドア》を押
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