》に置いていいのです」
そう云って帆村探偵はちょっと言葉をきった。
「なるほど面白い推理ですね」と大江山警部は大きく頭をふって云った。「すると犯人の名は……」
と云いかけたところへ、けたたましい警笛《けいてき》の響《ひびき》がして、自動車が病舎の玄関まで来てピタリと止った様子だった。やがて廊下をパタパタと跫音がすると、病室の扉《ドア》にコトコトとノックがきこえた。帆村探偵が席を立って開けてみると、多田刑事が笹木光吉を連れて立っていた。
「課長どの、すっかり種をあげてきました」と多田は晴やかに笑顔を作った。「これです、消音式《しょうおんしき》で無発光のピストルなんです。笹木邸の大欅《おおけやき》の洞穴《ほらあな》に仕かけてあったんです」といって真黒な茶筒《ちゃづつ》のようなものを、ズシリと机の上に置いた。
大江山警部が茶筒をあけてみると、内部には果して一挺《いっちょう》のピストルが入っていた。弾丸をぬき出してみると、確かに口径《こうけい》四・五センチだ。ピストルの内部を開いて螺旋溝《らせんこう》の寸法《ディメンション》を顕微鏡《けんびきょう》で測ってみると、兼《か》ねて押収して置い
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