んでくるように思われた。
「では私の話をきいていただきましょう」帆村探偵はソッと別室の半《なかば》開かれた扉を窺《うかが》うようにしてから、おもむろに口を開いた。「射撃手事件は、並々の事件ではないのです。犯人は、飛行船を組立てるように、なにからなにまで周到《しゅうとう》の注意を払《はら》って事件を計画しました。そこにはうっかり通りかかるとひっかからずには居られない陥穽《かんせい》や、飛びこむと再び外へ出られないような泥沼《どろぬま》を用意して置いたのです。ひっかかったものが不運なんです。私も貴方《あなた》同様に手も足も出なくなるところでした、もし犯人が最後に演じた大きい失敗をのこして呉《く》れなかったら。
第一から第三まで、三人の若い婦人の射殺は巧妙に遂《と》げられました。三人の射たれた箇所《かしょ》は、完全に一致しています。貴方は弾丸《たま》の飛来した方向を計算で出されたようですね。あれは大体事実と符合していますが、唯少し補正《ほせい》が必要なのです。それは、犯人が弾丸を車外から射ちこんだのではなくて、車内から射ったという点を補正すればよろしい」
「犯人は車内にいたというお考えです
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