薬莢の方はお邸の塀下に落ちて居り、弾丸は、ここに地図がありますが、線路を越してお邸《やしき》の向い側にあたる草叢《くさむら》から拾い出したのです。お心あたりはございませんか」
そう云って刑事は、白い西洋紙の上に、三品をのせて差し出した。多田刑事は、課長の出鱈目《でたらめ》に呆《あき》れながら、青年の顔色を窺《うかが》った。
「一向に存じません」と笹木はアッサリ答えた。「指紋が御入用《ごいりよう》なら、遠慮なく本式におとり下さい」
大江山警部は、笑いに、赭《あか》い顔を紛《まぎ》らせながら、白い西洋紙をソッと手許《てもと》へひっぱったのだった。
「九月二十一日の午後十時半には、どこにおいででしたか、承《うけたまわ》りたい」
「家に居ましたが、もう寝ていました。私はラジオがすむと、直《す》ぐ寝ることにして居りますから……」
「おひとりでおやすみですか」
「ええ、どうしてです。私のベッドに、独《ひと》り寝ます。妻は、まだありません」
「誰か、当夜ベッドに寝ていられてのを証明する人がありますか」
「ありますまい」
「十時半頃、何か銃声みたいなものをお聞きになりませんでしたか」
「いいえ。寝
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